インプラント治療の長期成功に関する包括的な研究発表であり、発表者は自らの臨床データを基に3部構成で解説を行いました。
発表者は冒頭で、インプラント治療の真の成功は単なる骨結合ではなく、10年、15年という長期間にわたって機能し続けることであると強調しました。そのためには高度な外科技術による適切なスタート、計画的なメインテナンス、そして合併症発生時の適切な対応体制が必要であると述べています。
第1部の外科的対応では、上顎臼歯部の骨吸収症例について詳細に説明されました。発表者は、残存骨量4mm未満の症例は珍しくなく、こうした困難な症例への対応能力が施設の治療レベルを示す指標になると指摘しました。1回法サイナスリフトについては、治療期間の短縮と患者負担の軽減に寄与し、適切な症例選択と術式により高い成功率を維持できると説明しています。また、上顎洞粘膜穿孔は一定確率で発生するが、適切な対処により長期予後への影響は最小限に抑えられると述べました。
第2部のメインテナンスに関する研究では、保定後2年以上経過したインプラント1,388本を対象とした解析結果が発表されました。定期的にメインテナンスを受けていたRC群では、インプラント周囲炎の発症率は35.5%であったのに対し、不定期もしくは未受診のIC群では62.7%と約1.8倍の差が認められました。これにより、定期メインテナンスによって発症リスクは約43%低下することが明確に示されています。
歯周病既往の影響についても詳細な分析が行われました。歯周病既往のない患者で定期メインテナンスを受けている場合の発症率は26.2%でしたが、歯周病既往があり、なおかつメインテナンスを怠った場合、発症率は78.0%に達し、約3倍のリスク増加を意味することが示されました。
ロジスティック回帰分析の結果、インプラント周囲粘膜炎の既往がオッズ比4.825と最も強い予測因子であり、次いで歯周病既往が4.290、不定期メインテナンスが3.054と続くことが明らかになりました。
第3部では、インプラント周囲炎と診断された153インプラントに対する外科的治療プロトコルとその結果が報告されました。治療手順は、切開剥離による視野確保、感染肉芽の完全除去、ダイヤモンドバーによるインプラント表面の機械的清掃、骨補填材填入、吸収性メンブレンによるGBR、縫合という流れで行われました。
外科的治療後1年6ヶ月の時点で、PPDは平均6.3±1.2mmから4.2±1.0mmへと2.1mm改善し、臨床的アタッチメントレベルは6.8±1.2mmから5.3±0.9mmへと1.5mm改善しました。プロービング時の出血は治療前100%から15.6%へと劇的に減少し、すべて統計学的に有意な差でした。
発表者は総括として、インプラント治療の長期成功には、高度な外科技術、定期的かつ継続的なメインテナンス、合併症発症時の外科的治療の三位一体が不可欠であることを強調し、特にメインテナンスは発症リスクを35.5%まで抑制できる最も効果的な予防戦略であると結論づけました。
◆文字起こし
インプラント治療の成功とは、単にインプラントが骨に結合したかどうかではありません。本当に重要なのは10年、15年と機能し続けることです。そのためには、高度な外科主義で正しくスタートを切り、計画的なメインテナンスによってその状態を維持し、万一合併症が起こった場合でも適切に対応できる体制が必要です。
本日はその全体像を自らの臨床データを交えながら解説します。本プレゼンテーションは3部構成です。第1部では何症例に対する外科的対応。第2部では、メインテナンスの臨床的意義。第3部では、合併症発症後の治療戦略を取り上げます。
インプラント治療を一連の流れとして理解していただくことが目的です。本プレゼンテーションは3部構成です。第1部では何症例に対する外科的対応。第2部では、メインテナンスの臨床的意義第3部では、合併症発症後の治療戦略を取り上げます。
インプラント治療を一連の流れとして理解していただくことが目的です。上顎臼歯部のコードコツ吸収症例では骨量不足が大きな問題となります。残存骨が4mm未満の症例は決して珍しくなく、こうしたケースにどこまで対応できるかが施設の治療レベルを示す指標になります。
・一回法サイナスリフト。
一回法サイナスリフトは、治療期間の短縮だけでなく、患者負担の軽減にも寄与します。適切な症例選択と術式を守ることで、困難な条件下でも高い成功率を維持できます。
・上顎洞粘膜
術後に見られる粘膜肥厚は生理的反応であり、多くは時間経過とともに改善します。
CBCTによる評価は、安全性確認において極めて重要です。
・術中合併症
上顎洞粘膜先行は一定確率で発生しますが、重要なのは、慌てず適切に対処することです。正しい修復処置により、長期予後への影響は最小限に抑えられます。
ここまでが治療のスタート地点です。しかし、インプラント治療の本当の価値は、その後どれだけ安定して機能するかにあります。
・定期メインテナンスの効果
本研究では、保定後2年以上経過したインプラント1,388本を対象に、解析を行っています。
その結果、定期的にメインテナンスを受けていたRC群では、インプラント周囲炎の発症率は35.5%でした。一方、不定期もしくは未受診のiC群では62.7%と約1.8倍の差が認められました。定期メインテナンスによって発症リスクは約43%低下することが明確に示されています。
・歯周病既往とメインテナンス
歯周病既往のない患者で、定期メインテナンスを受けている場合の発症率は、26.2%でした。しかし歯周病既往があり、なおかつメインテナンスを怠った場合、発症率は78.0%に達します。
これは約3倍のリスク増加を意味します。歯周病既往は強力なリスク因子ですが、メインテナンスによってその影響を大きく軽減できることがわかります。
・リスクの定量化
オッズ比、ロジスティック回帰分析の結果、インプラント周囲粘膜炎の起用はオッズ比4.825と最も強い予測因子でした。
次いで歯周病企業が4.290、不定期メインテナンスが3.054と続きます。特に不定期メインテナンスは、患者指導と管理体制によって改善可能なリスクである点が重要です。
・合併症発症の現実
これらのデータが示すのは、どれほど予防を徹底しても、インプラント周囲炎を完全にゼロにすることはできないという現実です。
しかし発症した場合でも、適切な治療介入により改善が可能であることを次に示します。
・外科的治療プロトコル
対象はインプラント周囲炎と診断された153インプラントです。治療は「切開剥離による視野確保」「感染肉芽の完全除去」「ダイヤモンドバーによるインプラント表面の機械的清掃」「骨補填材転入」「吸収性メンブレンによるGBR縫合」という手順で行いました。
・臨床指標の改善
外科的治療後1年6ヶ月の時点でPPDは平均6.3±1.2mmから4.2±1.0mmへと1.5mm改善しました。臨床的アタッチメントレベルは6.8±1.2mmから5.3±0.9mmへ2.3mm改善しています。プロビーングの出血は、治療前100%から15.6%へと劇的に減少しました。比べて統計学的に有意な差です。
・臨床像の変化
術前には、排膿と発赤、フローリング時の100%出血が認められましたが、術後1年6ヶ月では排膿は消失し、出血もほぼ認められなくなりました。
臨床的にも炎症の沈静化は明確に確認できます。
・総括
本研究からインプラント治療の長期成功には「1.高度な外科主義」「2.定期的かつ継続的なメインテナンス」「3.合併症発症時の外科的治療」この三位一体が不可欠であることが示されました。
特にメインテナンスは、発症リスクを35.5%まで抑制できる最も効果的な予防戦略です。


